サンゴ礁を、刺胞動物としての生物学と、地球規模の環境問題の両面から見つめ直そう。共生のしくみと白化のメカニズムを理解することが、保全への第一歩になる。
造礁サンゴは、クラゲやイソギンチャクと同じ「刺胞動物門」に属する動物で、刺胞という毒針をもつ触手でプランクトンを捕食する。個々の個体である「ポリプ」が炭酸カルシウム(石灰質)の外骨格を分泌し、無性生殖で分裂・出芽しながら群体を形成する。この骨格が数千年かけて積み重なり、巨大なサンゴ礁地形を築き上げてきた。
造礁サンゴの組織内には、渦鞭毛藻類の一種である褐虫藻(Symbiodinium)が共生している。褐虫藻は光合成産物の大部分をサンゴに供給し、サンゴはその栄養に大きく依存する。この共生こそが、栄養の乏しい貧栄養の熱帯海域でサンゴ礁が高い生産性を維持できる理由であり、成長に光を必要とするため造礁サンゴは浅い透明な海に分布が限られる。
海水温の上昇(平年より1〜2℃高い状態が数週間続くなど)や強光ストレスにより、褐虫藻の光合成系が損傷して活性酸素が生じ、サンゴは褐虫藻を排出する。これが白化で、共生藻を失ったサンゴは骨格が透けて白く見え、栄養供給を断たれて長期化すると大量死に至る。さらに海洋酸性化は骨格形成(石灰化)を妨げ、白化と並ぶ深刻な脅威となっている。
サンゴ礁は海洋面積の1%未満ながら海洋生物種の約25%が依存する「生物多様性ホットスポット」であり、沿岸保護や漁業・観光の基盤でもある。オニヒトデの大発生による食害、赤土の流出、乱獲、白化が複合的に脅威となる。沖縄などでは海洋保護区の設定、サンゴの移植・養殖、オニヒトデ駆除、赤土対策といった保全と再生の取り組みが進められている。